今わが国では「循環型社会」の形成に向けて、様々な取組みが行われている。すなわちリデュース(発生抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)という理念のもと、これまでのライフスタイル、ビジネススタイルを変えていこうというものである。こうした中で、そのスピードは決して速くはないが、ゴミの総排出量はわずかながら減少し、資源のリサイクル率も着実に増えてきている。しかし、努力してリサイクルし、無害化し、減量しても、なおどうしても埋立処分しなければならない最終的な廃棄物は出てきてしまうことを決して忘れてはならない。将来本当の意味でのゼロミッションが確立し、奇跡的に「ゴミゼロ」の日が訪れるとしても、それはまだまだ先のことである。つまり人間の営みがある限り、必ずこれはついて回るものであり、私たちはこの事に責任を持たねばならない。それならば、いつまでも「迷惑施設」などと言わずに、むしろポジティブな姿勢で「活用していく」という思考の転換を図るべきであろう。
廃棄物処理施設の立地においては住民合意が大前提であるが、合意が図りにくい最大の要因はダイオキシンなど有害物質等による大気や水質の汚染、つまり周辺環境へ及ぼす影響についての不安である。しかしこれらについては、維持管理上のルールを順守することや、基準に適合した施設とすることによってクリアすることが既に十分可能となっている。今、これらについての説明がきちんとなされた上で、さらに余熱利用による地域コミュニティ施設の創出や、リサイクルなど研究開発産業との連携、循環型社会についての教育や啓発の拠点としての位置付けなど、地域住民にとって有益な付加価値がもっとアピールされれば、“処理施設”という古い概念だけにとらわれない、新しい「地域融和型の社会基盤施設」として再認識されることは十分可能である。そしてこのような施設としての認識が確立した場合、従来、人口密集地や学校、関連施設などからできるだけ“遠ざけて”建設されることが当然とされていた処理施設が、環境面での徹底した配慮と利用面でのプラスという視点から、むしろこれらと“適切な距離”を保てば立地することが望ましいという解釈も成り立つものと考える。
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評価項目
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評価の視点
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住民参加促進に資する項目
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@監視システム構築の可能性
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ゴミ処理施設等の新規立地とその稼動においては、地域住民が日常的に十分な安心感を得られるような条件整備が不可欠である。したがって、ゴミ処理施設等の適正な稼動状況を住民と行政が相互に確認できることは有益である。よって以上のような条件整備を可能とする監視システムへの住民の参画を促し、町政への参加や身近な環境問題への関心を呼び起こすきっかけとなり得る地域であるのかどうかを評価することは重要である。
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A情報公開の可能性
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ゴミ処理施設等の立地においては、その事業主体となる行政と受益者となる住民の相互理解が必要不可欠である。したがって、相互の信頼関係を築くことができるような情報公開が的確に行なわれるシステムが確立されているかどうかを評価することは重要である。
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住民への便益向上に資する項目
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Bエネルギーの再利用
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ゴミ処理施設の特色の1つとして大量の熱を発生するということがある。この熱を適正に活用することは今後の循環型社会形成において非常に有意義なことである。今後余熱が有効に利用される可能性・ニーズのみならず、住民の生活の質向上に結びつく可能性を評価することは重要である。
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C都市施設(その他の還元施設)
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ゴミ処理施設の整備を契機に、地域の生活環境に新たな付加価値を創出できる可能性がある。その際、単なる代替施設とならないよう、本来の意味において地域住民の生活の質向上に結びつく可能性について評価することが重要である。
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D教育上の活用
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「環境」は誰もが取り組むことが望まれる学習対象であり、活動の対象でもある。ゴミ処理施設は存在そのものが「環境」を意識させるものであり、それ自体が環境学習の対象となり得るものである。したがって環境教育など、学校教育・生涯教育・環境啓発の場としての活用可能性・ニーズを評価する必要がある。
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E人口
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上記CDのような施設は地域の日常的な施設であることから、周辺人口の集積度により利用者数が左右される。このため周辺一帯の人口の集積状況を知ることは重要である。
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地域の振興に資する項目
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F地元雇用
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ゴミ処理施設及び、余熱利用施設の整備は新たな雇用を生み出す可能性が高い(例えば施設の維持運営等)。したがって求職者に新たな就業の機会を提供しうる可能性について評価する必要がある。
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G最終発生物の地域における活用の可能性
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循環型社会形成においては、地域内で発生したゴミもしくはゴミ処理施設に伴う発生物は、直接資源として地域内で適正に処理・活用することが必須である。このため、当地域内においても新しいゴミ処理施設からの発生物を地域外で処理することは避けるべきであり、地域内ですべて処理・活用できる可能性について評価することは重要である。
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H地域の産業・研究開発との連携可能性
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Gのように処理施設との直接的なつながりはなくとも、これと連携しながら新たな環境関連産業を誘発していけるような地元産業・研究開発機能がみられるかどうかについて評価する。例えば生ゴミ、廃家電、廃自動車、建設系廃棄物のリサイクル技術、有害物質の無害化処理研究など。
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I地域資源活用の可能性
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既存の地域資源を活用することで、地域の経済活性化に資するような仕組みができる可能性があるかどうかを評価する。例えば、群馬県冨岡市では処理施設の建設用地として林業組合の土地を借り、借地料を払うことが地元への収入につながった。
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J既存プロジェクト等との関連性
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今回検討されているゴミ処理施設は広域圏を対象とするものであり、広域圏全体においてきわめて重要な施設である。そのような施設の立地に際しては地域振興策においての位置づけを明らかにし、既存プロジェクト等との関連性が高いかどうかについて見極める必要がある。
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K町の政策・計画との関連性
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ゴミ処理施設が立地することになる町にとっては、“立地”を前向きに捉えることが重要である。したがってゴミ処理施設の立地そのものを、町の将来ビジョンやまちづくりの方向性と関連づけることができるかどうかを評価することが必要である。
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