本報告書は最終報告書ではないが、ごみ処理問題に対する基本的な考え方、ごみ処理施設の適地を選択するための分析、そして地域住民との合意を得るうえで必要なプログラム(道筋)の3部から構成されている。
なお、本報告書は塩谷広域行政組合と宇都宮大学スタッフによる共同研究の成果である。塩谷広域行政組合は適地選択に必要なデータの収集・提供と宇都宮大学スタッフに対するデータ分析上のアドバイスを、宇都宮大学スタッフは適地選択のデータの分析と報告書の作成を担当した。
ごみ問題の基本的な考え方は、
(1)ごみは、人間が生活することによって生じる不要物であること。言い換えれば、ごみは、人間が生活する限り発生するという点である。
(2)ごみの発生量が増大し、自然界への還元が困難になっていること。
したがって、ごみ処理対策の基本的考え方は、
1)ごみをつくらない(ごみの発生を可能な限りゼロにする)。
2)再利用できるものはごみから除外する。
3)それでも残る不要物を焼却し、埋め立てる焼却灰を減量する。
4)発生した焼却灰も可能な限り再利用する。
以上の基本的な考え方に立ち、本報告書では適地選択に必要な分析が行われている。
第1は、自然的条件からの評価方法による適地分析である。高根沢町、喜連川町、塩谷町を含む地域をメッシュに区切り、地質、地形等の自然条件から適地を評価している。
第2は、社会科学的分析方法による適地評価である。そこでの基本的視点として、ごみ処理施設を「迷惑施設」としてではなく、積極的(ポジティブ)に有益な施設として「活用していく」という思考の転換を採用している。この視点から、前記した3自治体のごみ処理等に対する取組を中心に評価し、適地としての総合評価を行っている。
第3は、適地選択の評価作業と並行して、ごみ問題に対する理解、施設設置に向けた合意を得るためのプログラムの提示である。このプログラムは、松島地区におけるごみ処理施設設置をめぐる問題の分析、他地域におけるごみ処理施設の設置問題の分析から導き出されたものである。
これら3点は相互に密接不可分のものであり、どれか一つが欠落しても適地選択、住民合意を得ることが不可能になる。したがって、第1、第2の評価を組合わせて、ごみ処理施設の適地を判断する材料の一つにしていただくと同時に、併せて、住民合意獲得に向けたプログラムを推進していただくことになる。
平成15年3月31日
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宇都宮大学副学長 北島滋(はじめに,総括)
宇都宮大学農学部教授 酒井豊三郎(第1章)
宇都宮大学工学部教授 今泉繁良(第1章)
宇都宮大学教育学部助教授 陣内雄次(第2章)
宇都宮大学国際学部助教授 中村祐司(第3章)
矢板市環境課長 得納基市
塩谷町住民課長 吉成 實
氏家町住民課長 斎藤充夫
高根沢町環境課長 小林秀男
喜連川町住民課長 角田壽男
塩谷広域行政組合管理課長 黒須敏文
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